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All-on-4のインプラントの配置

All-on-4のインプラントの配置ですが、上顎前歯の根尖部は骨の厚みがほとんどない場合あるので、その場合に上顎を4本で行う時はこの写真の下顎みたいに中央2本のインプラントの先端は正中から外側に向け、犬歯の根尖の延長線上を狙います。また上顎前歯の根尖部は骨の厚みがほとんどない場合でインプラントを6本埋める時は中央の2本の先端は前鼻棘を狙います。前鼻棘は厚みがあるので、中央2本の先端を外側(唇側)に振り、その隣の外側二本の先端は内側(舌側)を向け、一番遠心のインプラントの先端は外側(唇側)寄りにすることにより、インプラント先端部が接触したり近接することを防ぐことができます。それぞれのインプラントの先端部の距離を5ミリ離すことにより、骨の厚みを確保し、骨内の血流が確保できることと、手術による外傷性の侵襲が広がらないので全てのインプラントが強固なオッセオインテグレーションを獲得することが可能になります。

注釈)インプラント間の距離が極端に狭くなると、間に挟まれた骨の量が少なくなり、骨の正常治癒やリモデリングが阻害されるリスクがあります。

1日に80本のタバコを吸うヘビースモーカー

この患者さんは1日に80本のタバコを吸うヘビースモーカーです。右下の3本のストローマンインプラントは5年前に他の医院で埋入手術を行い、それ以降治療は受けていないということでした。また上顎は前歯部歯槽骨頂部より上顎洞底の方が下に位置しているという状態でした。以前はこのような患者様にはザイゴマインプラントで対応していました。私の経験では今までオッセオインテグレーションを獲得出来なかったザイゴマインプラントはありませんが、この右下に埋めたストローマンインプラントの様に管理されずに骨吸収を起こした場合のインプラント本体の撤去を考えるとザイゴマインプラントは簡単ではありません。ザイゴマインプラントを埋める頰骨の厚みは7ミリ程度しかありませんが、ザイゴマインプラントの直径は4ミリあります。ザイゴマインプラントを撤去する場合には頰骨が骨折するリスクが高いのです。そこで、最近ではザイゴマインプラントを避け、臼歯部にはサイナスリフトと同時インプラント埋入を行い、フルアーチの即時荷重を行うようになりました。なお、上顎結節には予備の為にインプラントを埋入し、上顎洞部に埋入したインプラントがオッセオインテグレーションを獲得出来なかった場合のスペアインプラントとして準備します。使用する必要がない場合は予備インプラントとしてスリーピングさせておきます。

この症例では上顎だけザイゴマインプラントを用いたAll-on-4を行い、下顎は治療介入しませんでした

この症例では上顎だけザイゴマインプラントを用いたAll-on-4を行い、下顎は治療介入しませんでした。

注釈)咀嚼機能が著しく制限された、崩壊状態の口腔を再建する場合には、予知性の高い治療計画を立案する必要があります。しかし、歯周病が高度に進行している歯牙がほとんどの口腔や既に根管治療と歯冠修復が行われた歯が二次カリエスになっている歯牙が大多数の場合、その歯牙に対して予知性の高い治療を行い口腔を再建することは非常に困難なのが実情です。そんな訳で、予後の望めない歯牙については、抜歯してインプラントに置き換えるという治療だけで無く、歯牙の位置と機能に問題ない場合は、機能的な問題がおこるまでそのまま何もせずに放置するという考え方で対処しました。

ブリッジと比較してインプラント治療の良いところ

ブリッジと比較してインプラント治療の良いところは、問題の無い歯は触らずに欠損部に歯を作ることができることです。ブリッジは欠損部の隣在歯を削らないと出来ない場合が多いのです。この患者さんの場合、下顎はAll-on-4で治療を終了し、上顎も安定した予後が望めない残存歯を抜歯してAll-on-4にするという治療もありますが、人工歯をスーパーボンドで仮に固定した前歯と右側臼歯が問題なく使用できていたので、左上の欠損部だけインプラントを行うことになりました。その状態で数年経過していますが、問題なく普通に使用できているようです。

注釈)ブリッジ対するインプラント治療の優位な点は欠損部以外の歯牙を削る必要が無いということです。しかし残存歯が健全歯であっても咬合高径が低下していたり、顎位に問題がある場合は、残存歯を削って補綴することが必要な場合も珍しくありません。

テンポラリー使用のインプラントが最終補綴に組み込まれた症例

この症例では上顎の正中にテンポラリーインプラントとして、即時負荷の補強目的で思いっきり浅くインプラントを埋めました。この正中部のインプラントは後から撤去する予定でしたが、強力にインテグレーションしてしまい、補綴製作上も問題無かったので、そのまま補綴に組み入れました。この補綴システムはネジ止めでは無く、アンキロスのシンコーンシステムなので、仮に、後から正中部の浅く埋入したインプラントを撤去しても、補綴物は改造すること無く、そのまま使用することが可能です。

注釈)現在ではあまり行われなくなりましたが、昔、インプラントは即時荷重を行うとインテグレーションを獲得できないのでテンポラリーインプラントとして細いインプラントを本来のインプラントの間に埋めて仮歯を維持させる、という治療法が提唱された時代がありました。この症例では後から撤去する予定で、正中部の浅い位置に仮歯の為に細いアンキロスインプラントを浅く埋め、仮歯の維持に使用しましたが、強力なオッセオインテグレーションを獲得しましたので、最終補綴の設計に組み込むことになりました。

この症例は最終的には下顎の親知らずを抜歯して

この症例は最終的には下顎の親知らずを抜歯して、上顎を後方部まで補綴する予定だったのですが、患者さんが後から「やっぱり親知らずは抜きたく無い」と宣うので、上顎奥のインプラントはスリープとなりました。

注釈)この患者さんは友人の歯科医師からの紹介で上顎にAll-on-4を行いました。下顎のインプラントや補綴は紹介元の先生の仕事です。上顎の上顎洞前方のインプラントの埋入位置が上顎洞が前方に張り出していた為、標準的な位置より前方になったので力学的配慮から上顎結節部にもインプラントを埋入しましたが、下顎の左右の親知らずが既に補綴処置がしてあり、患者さんが抜歯を望まなかったので、上顎結節部のインプラントは今後問題が起こった時のスペアインプラントとしてスリーピングすることになりました。

この症例は上顎の顎堤の真上が上顎洞では無く

この症例は上顎の顎堤の真上が上顎洞では無く、大きく拡大した鼻腔なのでサイナスリフトができません。このようなケースはザイゴマインプラントかショートインプラントの数を増やして対処します。しかし、これだけインプラントの数が多いと従来のロウ着を用いた補綴では適合が得られません。まさに現代の技術であるCADCAMの恩恵で成しうる治療です。

注釈)インプラントの本数が多くなると補綴物の適合を得ることが非常に難しくなります。この症例では上顎に10本のインプラントが埋入してありますが、従来の鋳造とロウ着の技術では、理論上的にも全てのインプラントとフレームがパッシブフィットを得ることは不可能でした。ところが、フレームをCADCAMで金属の塊からワンピースで削り出すというソリューションが開発されて可能になった治療です。

上顎の小臼歯部や大臼歯部において

上顎の小臼歯部や大臼歯部において、歯槽頂には骨が無くても、口蓋部に骨がある場合があります。口蓋部の骨は硬い場合が多いので即時過重をかけるのには非常に有効です。手術を行う場合には事前にシムプラントなどのインプラントシュミレーションソフトで使える骨が無いのか?入念にチェックすることが重要です。

注釈)上のパノラマレントゲン写真を見ると上顎の両側の後方インプラントは上顎洞の中に突き出しているように見えます。しかし、この患者さんは口蓋側の上顎骨に厚みがあったので咬合平面に対してインプラントの先端部を口蓋側に傾斜させて骨内にインプラントを収めているのです。

ザイゴマインプラント

ザイゴマインプラントは現時点ではノーベルバイオケア社からしか出ていません。しかし、ノーベルのタイユナイトと呼ばれるインプラント表面はインプラント周囲炎をひき起しやすいと言われています。このインプラントでオッセオインプランテーションを期待する場所は先端の15mm程度だけなので、あとは機械研磨面仕上げにしていただけると、付着歯肉の少ない上顎小臼歯部にはありがたいです。年末にBiomet3iのCEOが我家に来た時にBiomet3i社製のザイゴマインプラントを作るように御願いしましたが、果たして可能でしょうか?

注釈)インプラント治療に伴う合併症として、インプラント周囲炎が最も一般的におこる問題です。インプラント周囲炎の主原因はインプラント表面に細菌が付着し、インプラント周囲の骨や歯肉に感染し、歯肉や歯槽骨に炎症を起こし、最終的にはインプラントを支持している歯槽骨の吸収を引き起こしインプラントが脱落してしいます。

ザイゴマインプラントは頬骨に支持を求めたインプラントですが、実際に骨とオッセオインテグレーションしている部位は先端の15mm程度です。現代インプラントの基本となったブローネマルクインプラントは世の中に出た時はターンドと呼ばれる旋盤機械仕上げのインプラントだったのです。その表面性状はインプラントの表面が光を反射するような凸凹の少ない構造だったのですが、骨との結合力が弱いので、インプラント表面をブラスト加工や酸エッチング加工などで、凸凹をつけ、表面積を大きくする加工を施すようになりました。ノーベルバイオケア社は2000年にタイユナイトと呼ばれる陽極酸化処理を行なったインプラント表面に変更になりました。この表面構造は従来のターンドと呼ばれる旋盤機械仕上げよりずっと骨との結合がよくなりましたが、同時に細菌感染に弱くなり、インプラント周囲炎を惹起することが増えてきたのです。

現在は2019年で、この原稿を書いた2013年から6年経過しました。2013年当時、ザイゴマインプラントはノーベルバイオケア社からしか出ていませんでしたが、現在では10社程度から販売されており、ノーベルバイオケア社以外では、インプラントの先端部以外の表面構造はスムーズで凸凹の無い構造をとっているザイゴマインプラントが存在します。

2012年の年末、Biomet3i社の女性CEOが私に会うために名古屋に来た折に、インプラント周囲炎になり難いBiomet3i社のオッセオタイト表面でザイゴマインプラントを作れないか?と相談したところ、通常製造ラインには無いので、スペシャルラインを作って個別注文に応じるという返事を貰いました。

この症例は上顎のAll-on-4ですが

この症例は上顎のAll-on-4ですが、通常は骨質の悪い上顎結節部に十分な骨質と骨量がありましたので、上顎結節部のインプラントも即時負荷を行いました。

注釈)この症例のように全顎に及ぶインプラント治療ではスクリューリテイニングと呼ばれるねじ止め方式で補綴物をインプラントに固定することが一般的です。スクリューリテイニングはドライバー1本で補綴物の着脱が可能ですがセメント合着ではトラブルがおこると補綴物を破壊しなければ補綴物を撤去することができません。しかし、スクリューリテイニングを行う為には、歯科医師だけで無く歯科技工士もインプラントに経験豊富な技術と経験が必要になります。インプラント技工ができる技工士は限られており、また歯科医師とも常日頃からのコンタクトが重要です。