患者さんの顔貌だが、唇をわずかに開いた時には下顎前歯と下顎前歯の歯肉が外観に露出するのに上顎は歯牙がほとんど外観に露出しないです。
咬合高径を挙上し、下顎位を前方に誘導する為、上顎はAll-on-4(オールオン4)で修復することにしました。
この症例で印象的だったのはインプラント埋入時に右上犬歯部と右上小臼歯部のドリリング時にパイロットドリルを引き抜いた時、血液では無く、黄色い脂肪の液が形成窩から出てきたことです。
インプラント自体は十分な初期固定を得ることが出来たが、11ヶ月後に、右上犬歯部と右上小臼歯部のインプラントは十分なオッセオインテグレーションが得られておらず、マルチユニットアバットのスクリューを締結する時点でインプラントが回転したので撤去しました。使用したインプラントはZIMMER-BIOMET社製のT3インプラントです。
9ヶ月待って二次手術を行なったが、全てのインプラントのオッセオインテグレーションを確認しました。
9ヶ月待ってオッセオインテグレーションを獲得したインプラントのアバットメントに印象用コーピングを装着し印象を採得しました。
この印象は最終印象では無く、印象用のコバルトクロムで鋳造した患者さん個人の為の印象用フレームを製作する為の印象です。印象用コーピングを装着した際に、印象用コーピングがアバットメントに完全に装着されていることをパノラマレントゲン写真で確認してから印象採得を行います。
技工所に発注したコバルトクロムで鋳造された印象用のフレームが出来上がってきたので、パノラマレントゲン写真で印象用コーピングが浮いていないことをパノラマレントゲンで確認した後、鋳造印象用フレームと個々の印象用コーピングとをパターンレジンで固定し、上からシリコン印象材でオーバーインプレッションを行います。
この症例で特徴的だったのは、上顎のAll-on-4において、右上部の2本のインプラントがオッセオインテグレーションを獲得出来なかったことです。原因として考えられることは、やはり骨質が極めて悪かったことです。
骨質は通常はCTから得られるハンスフィールド値で判断しますが、この患者さんにおいてCT値自体は良くは無いものの、通常はオッセオインテグレーションを獲得出来るレベルの悪さでした。では、どのように悪かったかと言うと、インプラントを埋める時に骨で穴を開けた時に、通常は出血が起こるのですが、この患者さんは骨の穴から血液では無く、透明な液、つまり脂肪が出てきたのです。このような骨はハンスフィールド値が良くてもオッセオインテグレーションを獲得することは難しいのです。
ましてや即時負荷には不利なのです。幸い、他のインプラントではオッセオインテグレーションを獲得できましたので、それらのインプラントで固定式のテンポラリーを維持し、インプラントを追加埋入しました。追加埋入したインプラントは最高のオッセオインテグレーションを獲得する為、即時負荷をかけず6ヶ月安静にします。
すると、全てのインプラントでオッセオインテグレーションを獲得することができました。患者さんが困らないようにする為には、上顎には4本では無く、6本のインプラントを使用するということが重要なのです。インプラントの本数が多すぎるデメリットは費用負担が増すことと、インプラント間の距離が近くなることです。インプラント間の距離が近くなり過ぎると清掃も難しくなりますし、骨内の血流も悪くなりますのでインプラント周囲炎になって骨を失いやすいという副作用があります。
上顎462万円(税込)