この患者さんが来院した時には上下のコーヌステレスコープ義歯を使用していました。
コーヌステレスコープ義歯は可撤式義歯の中では最も咬める義歯だが、支台歯に内冠を装着する為に歯牙の切削が必要になり、結果、歯牙が喪失するリスクが高くなります。この症例でも上顎は問題無かったが、下顎の内冠は全て喪失し、歯牙は残根状態で長期の保存は難しいと判断し、上顎は現在のまま、下顎はAll-on-4(オールオン4)で機能回復を図ることにしました。
下顎にインプラントを埋入直前の下顎咬合面観
下顎にインプラントを埋入直前の下顎正面観
コンピューターサージカルガイドステント
インプラントの埋入を終了しました。
テンポラリーシリンダーを義歯の補強線として使用するステンレスワイヤーを屈曲して囲みます。
補強線を矯正用のリガチャーワイヤーで結紮し、レジンで固定します。
下顎All-on-4(オールオン4)手術の醍醐味は手術したその日に動かない見た目の良い固定式の仮歯を装着出来ることです。上の写真は手術日当日の固定式の仮歯が装着された状態です。
全てのインプラントがオッセオインテグレーションを獲得していることを確認しました。
オッセオインテグレーションを獲得したインプラントのアバットメントに印象用コーピングを装着し印象を採得します。この印象は最終印象では無く、印象用のコバルトクロムで鋳造した患者さん個人の為の印象用フレームを製作する為の印象です。印象用コーピングを装着した際に、印象用コーピングがアバットメントに完全に装着されていることをパノラマレントゲン写真で確認してから印象採得を行います。
技工所に発注したコバルトクロムで鋳造された印象用のフレームが出来上がってきたので、パノラマレントゲン写真で印象用コーピングが浮いていないことをパノラマレントゲンで確認した後、鋳造印象用フレームと個々の印象用コーピングとをパターンレジンで固定し、上からシリコン印象材でオーバーインプレッションを行います。
メタルフレーム試適
この症例の特徴は、上顎はコーヌステレスコープ義歯で既に補綴されているという点です。今後、上顎の歯牙が問題を起こし現在の義歯の使用が不可能になった場合は上顎に大掛かりな治療が必要になるというリスクがあります。
この症例では残存歯に手をつける必要がありませんでしたが、残存歯が挺出していたり、傾斜していたり、咬合平面が傾いている場合に、残存歯を触らないままで対顎のインプラント治療を行うと、咬合平面は傾いたままになりますし、一部のインプラントに過度の負荷がかかるという副作用があり、結果治療が安定しないというリスクがあります。オーラルリハビリテーションにおいては、欠損を修復するだけでなく、既存している歯やインプラントはその位置を再評価して、場合によっては抜歯や再補綴、矯正治療による歯牙の移動が必要になります。
下顎253万円(税込)