欠損補綴において従来は可撤式義歯、いわゆる「入れ歯」が一般的だが、この「入れ歯」には「噛みにくい」ということ以外に大きな問題がある。
この患者さんは、上顎は左上に残根があるが、その残根をカバーする総義歯を装着している。一方下顎だが、右側にはブレードタイプの古いインプラントが歯牙と連結された状態で機能している。下顎前歯は根面板が装着されているが、3本中2本の根面板は既に脱離してしまっている。
パノラマ写真を見ると左下の歯槽骨が下顎管直上まで著しく吸収している。
このように可撤式義歯、いわゆる「入れ歯」を使用すると、歯槽骨が吸収してしまうのだ。特に入れ歯の噛み合う相手が歯やインプラントだったり、入れ歯だったりしても、その下に歯牙の根っこが残っている場合は、破壊的な歯槽骨の吸収をおこすことが多いのだ。
この患者さんは先ずは無歯顎の上顎からAll-on-4(オールオン4)を行なった。
下顎は歯肉の剥離量が少ないコンピュータサージカルガイドを用いて行われた。使用したインプラントはストローマン社のBLTインプラントを使用した。
上下のインプラントの印象用鋳造フレームを製作する為の印象
インデックス用の鋳造フレームと印象用コーピングをパターンレジンで固定し、上からオーバーインプレッションを行います。
メタルフレーム試適
この症例のリスクは患者さんが糖尿病患者であったことと、既に下顎にインプラントが埋入してあったことです。下顎のインプラントは撤去も考えましたが、長期の使用にかかわらず問題無く機能していたこと、レントゲン的に問題が認められないことから保存したことです。
このようなフルマウスのインプラント治療は治療によって顎位置や咬合高径、咬合平面の変更が可能なことですが、今回のように部分的に歯牙やインプラント補綴物を残すと、それによって顎位置や咬合高径、咬合平面の変更が制限されるという副作用があります。
上顎330万円(税込)、下顎253万円(税込)