この患者さんが当院を初診で来院した時は上顎には前歯が残根の上にメタルコーピングが装着した状態で使用されていました。
可撤式義歯の問題は食事中に落ちてくる、外れる、硬いものが咬めないなどの問題があります。残根にメタルコーピングを用いると硬いものを咬んでも、メタルコーピングの直上の部分で咬めば痛みはあまりありませんが、今度は吸着を得られず、義歯が落ちてくるという問題がありますし、奥歯で咬めば痛みが出るという問題があります。
この患者さんの場合、とりあえず咬めない上顎をなんとかするということで、上顎をAll-on-4(オールオン4)にすることにしました。
その時点では患者さんの意思で下顎については上顎の治療経過を観てから考えるとのことで、先に上顎の治療を進めました。
All-on-4はインプラント埋入時に抜歯をすることが原則ですが、根尖病巣などがある場合はインプラント埋入に先立って抜歯しておいた方が、術後の感染や腫れ、痛みなどを抑えることができますので、抜歯によって外観が悪くなるような場合以外は、なるべく術前に抜歯し歯肉の状態を正常に戻しておきます。
上顎は6本のZIMMER-BIOMET社製インプラントを用いAll-on-4(オールオン4)を行いました。
手術は午前中に静脈内鎮静下で局所麻酔下にて行われましたが、手術時間は1時間程度です。午後には埋入したインプラントに仮歯を固定します。
上顎インプラント埋入半年後、仮歯を撤去し、オッセオインテグレーションを確認しましたところ、全てのインプラントのオッセオインテグレーションを確認できました。
上顎の仮歯の調子が良いということで、下顎の残存歯を再評価した上で、下顎もAll-on-4(オールオン4)を行うことにしました。
下顎のAll-on-4(オールオン4)において下顎のインプラント埋入が終了した時点でのパノラマレントゲン写真です。一般的に下顎のAll-on-4(オールオン4)4本のインプラントで行いますが、この症例ではオトガイ孔が通常より極端に前方に位置していましたので、下歯槽神経とのバッティングを避ける為、後方のインプラントを前方に配置した為、左右の最後方部にインプラントを追加しました。
下顎は付着歯肉を確保する為に、コンピュータサージカルガイドを行うのですが、骨膜を剥離します。
下顎の印象用鋳造フレームを製作する為の印象
上顎の印象用鋳造フレームを製作する為の印象
インデックスモデルを製作する為、鋳造コバルトクロムフレームを印象用コーピングにパターンレジンで連結した上からオーバーインプレッションを行います。
フレーム試適とリマウント
この症例の特徴はオトガイ孔の位置が通常より前方にあったことと、骨幅が狭かったので下顎の後方部の傾斜インプラントの位置が通常より前方に埋めざるを得なかったので、大臼歯部にインプラントを追加埋入したことです。傾斜インプラントを後方にずらすと神経麻痺やインプラント本体が骨から露出するリスクがあります。
現在のインプラント埋入位置で前方に4本のインプラントだけで補綴を行うと前方インプラントのアバットメントと後方インプラントのアバットメントが直線上になる為、応力が集中しインプラントのオッセオインテグレーションが喪失や、補綴物のフレーム破損という副作用が発現します。
上顎330万円(税込)、下顎330万円(税込)