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治療例から学ぶ

上下顎崩壊症例(1)

全ての歯牙が歯周病に罹患のケース

治療前

レントゲン写真
正面の口元写真

全ての歯牙が歯周病に罹患しており、多くの歯牙に著しい動揺を認めました。患者さんは体格の良い男性です。

歯周病の写真
歯周病の写真
歯周病の写真
歯周病の写真
歯周病の写真
歯周病の写真

歯周病の写真
歯周病の写真
歯周病の写真
歯周病の写真
歯周病の写真
歯周病の写真

咬合高経が著しい喪失が認められ、咬合挙上が必要です。

手術後当日

パノラマレントゲン写真
口内写真(上下)

動揺の認められない両側下顎第二大臼歯を残し、全ての歯牙を抜歯し上顎は左右サイナスリフトを行い、上顎は前歯部に6本と左右上顎結節部に2本のインプラントを埋入し、良好な初期固定が得られた前歯部と左側上顎結節部に手術当日に固定式の仮義歯を装着しました。

一方、下顎は下顎オトガイ孔間に4本のインプラントを埋入し、手術当日に固定式の仮歯を装着しました。使用したインプラントは全てバイオホライズンズ社のテーパードインプラントを使用しました。

手術の詳細(上下のAll-on-4・両側のサイナスリフト)

手術写真

上顎インプラント埋入時の口腔内写真です。
術前で一般診療室で口腔内清掃と浸潤麻酔を行い、誤飲誤嚥の可能性のある動揺が酷い歯牙を抜歯した後、クリーンルーム化された手術室に入室します。

手術写真

動揺の少ない歯牙に固定元を設けたコンピュータサージカルガイドステントを用いてインプラント埋入手術を行います。
骨は内部で骨質が良い部位と悪い部位が極端に分かれます。釣りをする場合に、魚群探知機で魚の群れがいる場所に網を張るのと動揺で、骨があるからと言って、闇雲にインプラントを埋めても、骨の内部がスカスカの場合、インプラントは十分な初期固定を得ることができず、十分なオッセオインテグレーションを獲得することができません。特に、上顎結節部は歯肉を切開剥離してもコンピュータサージカルガイドステントを用いなければ適切な場所に正確にインプラントを埋入することは不可能です。

また、コンピュータサージカルガイドステントを使用することにより、手術時間の短縮が可能になりますし、歯肉の剥離範囲が著しく減少し、術後の腫れや痛みを抑えた低侵襲手術が可能になります。

手術写真

上顎に6本のインプラント埋入と左右のサイナスリフトが終了した状態です。
初期固定が得られた前歯部と左側上顎結節部にはマルチユニットアバットメントとその上にテンポラリーシリンダーが装着され、手術後に固定式の仮歯が装着されます。

手術写真

上顎のインプラント埋入手術が終了後、下顎のインプラント埋入を行います。
今回の手術では、上下のAll-on-4、両側のサイナスリフトを行いますが、全身麻酔では無く、静脈内鎮静を併用し局所麻酔で行う手術ですので、全行程を2時間以内で行うことが望ましいのです。その為には、術者は手技に熟練していることが必要ですし、静脈内鎮静などの全身管理は術者とは別の医師、歯科医師が行うことが必要です。

手術写真

下顎も上顎と同様にコンピュータサージカルガイドステントを用いて行います。
下顎には下顎管が走行しており、内部の下歯槽神経を損傷しない為、通常は広範囲で歯肉を剥離した後、オトガイ孔を確認しインプラント埋入を行いますが、コンピュータサージカルガイドステントを用いることにより、最小限の歯肉の剥離で正確なインプラント埋入が可能になります。

手術写真

下顎はコンピュータサージカルガイドステントを用いることにより、歯肉の切開や剥離なしに、4本のインプラントを正確に埋入することができました。

パノラマレントゲン写真

手術を行った日の午後に上下の固定式の仮歯を装着

仮歯装着写真

仮歯装着写真(口元拡大)
仮歯装着写真(歯茎拡大)
仮歯装着写真(歯茎拡大)
仮歯装着写真(歯茎拡大)
仮歯装着写真(口腔内)
仮歯装着写真(口腔内)

仮歯装着写真(口元拡大)
仮歯装着写真(歯茎拡大)
仮歯装着写真(歯茎拡大)
仮歯装着写真(歯茎拡大)
仮歯装着写真(口腔内)
仮歯装着写真(口腔内)

仮歯ですが、この時点では上下の前歯部しか咬合させません。
その理由は、奥歯を咬合させると、患者さんは左右にグラインドする咬合をしますので、インプラントが揺すぶられてインテグレーションしないからです。また、前歯部だけの咬合を与えると圧迫されていた関節円板への過大な力から解放され、関節円板が前方転移していた場合は、元の位置にもどり、顎位がリセットされる可能性があるからです。

インプラント埋入から4ヶ月経過したので、下顎のインプラントのオッセオインテグレーションを評価します。
本来であれば、下顎は3ヶ月でオッセオインテグテーションを確立しているのが一般的です。ところが、この患者さんは下顎前歯に埋入した4本のインプラントの内、左側の2本が十分なオッセオインテグレーションを得られていませんでした。動揺があった訳ではありませんが、個々のインプラントに接続されたチタン製のテンポラリーシリンダーを叩いた時の音が、カーンと響かないのです。インプラントはインプラントに加わる力により50~150ミクロン以上の動きが加わると骨芽細胞の骨の形成が阻害される為、一般的にはインプラント埋入手術後は安静にして力を加えないことが重要です。ところがAll-on-4(オールオン4)では、インプラントを埋入した当日にインプラント本体に固定式の仮歯を装着しますので、食事や夜間の食いしばりによって、仮歯が揺り動かされ、十分なオッセオインテグレーションを獲得することが出来なかったのです。

このような場合はオッセオインテグレーションを獲得出来なかったインプラントを撤去し再埋入手術を行うしかありません。
しかし、下顎に固定式の仮歯を装着する為には最低4本のインプラントが必要です。厳密に言うと3本のインプラントで下顎全顎の補綴物を支えることが可能ですが、私の考えでは常にスペアが必要です。2本のインプラントでは下顎全顎の補綴物を長期に支えることは不可能です。その場合、2本のインプラントは過重負担でオッセオインテグレーションを喪失してしまいます。最低限の3本のインプラントでは咬合力が過大な場合や、夜間の食いしばりなどの悪習癖がある患者さんは、結果、全てのインプラントのオッセオインテグレーションを喪失してしまう可能性があるのです。

パノラマレントゲン写真

手術写真
手術写真
手術写真
手術写真

手術写真
手術写真
手術写真
手術写真

左側の前歯部に埋入したインプラントを撤去しても、固定式の仮歯を維持する為に左側に2本の短いインプラントを埋入します。この下には下顎管があり、下歯槽神経が走行しているので長いインプラントを埋入することは不可能なのです。

撤去した下顎インプラント

2015年5月20日に撤去した下顎インプラント。インプラント表面に骨はインテグレーションしていません。

撤去した下顎インプラント

撤去したインプラントを確認すると、なんとチタン製のテンポラリーシリンダーが根元で折れていることが確認されました。この患者さんの2本の下顎インプラントがオッセオインテグレーションを獲得出来なかったのは、患者さんの咬合力が強すぎたり、夜間に食いしばりや歯軋りなどのブラキシズムがあることが予想されます。

撤去した上顎インプラント

2015年7月3日に上顎インプラントのインテグレーションを確認したところ右上臼歯部の傾斜インプラント2本がオッセオインテグレーションを得られていないことが確認されました。尚、インテグレーションを得られていた残り2本の前方インプラントの1本は下顎と同じようにテンポラリーシリンダーが根元で破損されており、もう一本はインプラントをマルチユニットアバットメントに固定しているネジが折れていることが確認されました。

オッセオインテグレーションが得られていなかった2本のインプラントは、下顎と同様に咬合力が過大であったか、夜間の食いしばりなどの悪習癖が原因と考えられます。そんな時の為に予め用意してあって右側の上顎結節部のインプラントにオッセオインテグレーションを確立していたインプラントと連結して固定式の仮歯を維持しました。

パノラマレントゲン写真
パノラマレントゲン写真

この患者さんのように即時負荷をかけたインプラントのネジやテンポラリーシリンダーが破損してくる患者さんに対しては、インプラントの数を増やして咬合力を分散して対応するしかありません。

上下顎にインプラントを追加埋入手術終了直後の口腔内写真
上下顎にインプラントを追加埋入手術終了直後の口腔内写真

上下顎にインプラントを追加埋入手術終了直後の口腔内写真
上下顎にインプラントを追加埋入手術終了直後の口腔内写真

この上の2枚の写真は上下顎にインプラントを追加埋入手術終了直後の口腔内写真ですが、既にオッセオインテグレーションを確立したインプラントに固定源を設けた、コンピュータサージカルガイドステントを用いて手術を行っていますので、無切開、無剥離での手術の為、ほとんど出血がありません。

パノラマレントゲン写真
パノラマレントゲン写真

パノラマレントゲン写真
パノラマレントゲン写真

以前にオッセオインテグレーションを獲得出来なかった、もしくは喪失してしまった経緯があるので、2年以上の経過を確認した後、最終補綴物の製作を行います。

手間暇、コストがかかりますが、極限まで精度を追求した補綴物を製作する為には、患者さん毎にカスタムメイドでオーダーした鋳造コバルトフレームを印象用コーピングにパターンレジンで固定したインデックス印象を使用します。

最終補綴物をセットした状態

パノラマレントゲン写真
レントゲン写真

最終補綴物装着
最終補綴物装着(口元拡大)
最終補綴物装着(横口元)
最終補綴物装着(横口元)

最終補綴物装着
最終補綴物装着(口元拡大)
最終補綴物装着(横口元)
最終補綴物装着(横口元)

咬合力が過大な患者さんなので、補綴物が破損しづらいように、メタルフレームと一体化したメタルオクルーザルで仕上げています

最終補綴物装着(口元拡大)
最終補綴物装着(口元拡大)
最終補綴物装着(口元拡大)
最終補綴物装着(口元拡大)
最終補綴物装着(口腔内)
最終補綴物装着(口腔内)

最終補綴物装着(口元拡大)
最終補綴物装着(口元拡大)
最終補綴物装着(口元拡大)
最終補綴物装着(口元拡大)
最終補綴物装着(口腔内)
最終補綴物装着(口腔内)

咬合力が過大な患者さんなので、補綴物が破損しづらいように、メタルフレームと一体化したメタルオクルーザルで仕上げています

装着後2ヶ月経過

パノラマレントゲン写真
レントゲン写真

装着後2ヶ月経過した時点で、ネジの緩みによって補綴物が浮き上がっていないかレントゲンで確認します。

リスク・副作用、費用について

リスク・副作用

この症例のリスクはインプラントのオッセオインテグレーションが獲得できない、獲得したオッセオインテグレーションが安定しない患者さんだという点にあります。

現在のインプラントは表面性状が進化し、即時負荷をかけない場合は100%に近い確率でインプラントはオッセオインテグレーションを獲得することができます。しかし、All-on-4ではインプラント埋入当日にインプラントに荷重がかかります。インプラントに荷重がかかると骨はしの度に動き変形します。骨は骨折などが起こると骨芽細胞が出てきて血餅の内部に骨を作ります。

ところが、血餅に動きがあると骨芽細胞が出てこないので骨が出来ないのです。インプラントがオッセオインテグレーションを得られていない時期にインプラントに大きな荷重がかかるとインプラント周囲の血餅が動き、骨芽細胞が骨を作らなくなってしまいます。

そこでAll-on-4の成功の鍵となるのは、咬合力がかかってもインプラントが動かないようにすることです。この患者さんのように体格の良い患者さんは噛む力も強いので、噛む度にインプラントを左右に揺すってしまうことが多いのです。そこでインプラントは標準より本数を増やして、また、より長い、より太いインプラントを使用してインプラントと骨との表面積を増やすことを考えます。

また、All-on-4において、骨質が硬く、長いインプラントの使用が可能な下顎前歯部ですが、この部位は骨が緻密過ぎて、血流が乏しく、オッセオインテグレーションを獲得できないことがしばしばあります。そこで、このような症例では下顎のAll-on-4でも通常の4本のインプラントでは無く、数を増やして、大臼歯部までインプラントを埋入して対応します。また上顎では上顎結節部にもインプラントを埋めています。

下顎大臼歯部は通常骨量が少ないので下歯槽神経麻痺の副作用の可能性がありますので、コンピュータサージカルガイドを使用することが有効です。

費用

上顎420万円、下顎300万円