治療方針を学ぶ

オッセオインテグレーションを喪失する理由

オッセオインテグレーションとは

オッセオインテグレーションとはチタン製のインプラント体(フィクスチャー)が光学顕微鏡レベルで軟組織を介在させない状態で骨と接している状態のことを言います。この状態を獲得できれば基本的にはインプラントは長期にわたり安定した機能を得ることが可能です。

歯科インプラントは歴史が長いのですが、オッセオインテグレーションタイプ以前の歯科インプラントはインプラント体(フィクスチャー)と骨の間に軟組織が介在しており、長期間使用しているとインプラントは徐々に沈下し、インプラント周囲に骨吸収がおこり、インプラントは数年でグラグラになって脱落してしまうことが多発する安定度に乏しい治療でした。

ブローネマルクインプラント


現代のインプラントを発明したブローネマルク教授(右)
と1965年最初の患者であるイエスタ・ラーション氏(左)

オッセオインテグレーションはブローネマルク教授が1962年にウサギの脛骨に装着したチタン製のチャンバーの除去が難しいことを発見し、このチタンと骨との結合をオッセオインテグレーションと命名しました。そしてチタン製のネジを歯科インプラントとして用いることを考え出し、1965年には人に対してオッセオインテグレーションタイプのインプラント治療が行われました。

このブローネマルク教授が開発したブローネマルクインプラントは長期に安定することが分かり、その後、チタンとインプラントのオッセオインテグレーションを期待するネジ型のインプラントがインプラントの主流になりました。

ブローネマルクインプラントが出現する以前は、インプラント体と骨の接触面積を増やす為にマクロデザイン的にはバスケットタイプと呼ばれる籠状の形態や、ブレードと呼ばれる平たい鋸の刃のような形態のインプラントが多く用いられましたが、時代の流れとともにブローネマルクインプラントスタイルのネジ形状のインプラントが主流となり、現在はネジ形状のインプラントが歯科インプラントのほとんどを占めています。

インプラント表面のミクロ性状の進化の時代へ

インプラント

ブローネマルクインプラントの登場で長期に安定する現代インプラントは確立しました。その後のインプラントの進化はインプラント表面のミクロ性状の進化の時代に入ります。

ブローネマルクインプラントは一旦オッセオインテグレーションを獲得すると長期に安定することが分かっていましたが、旋盤仕上げと呼ばれる表面構造は、なかなかオッセオインテグレーションを獲得することが出来ない表面構造だったのです。そもそもブローネマルクインプラントは下顎の無歯顎に対し、オトガイ孔間に6本程度の長いインプラント体を用いることによって成立しましたが、骨質が悪く、十分な長さのインプラントを使用出来ない上顎大臼歯部では30%以上の確率でオッセオインテグレーションを獲得することが出来ない状況でした。

上顎大臼歯部にオッセオインテグレーションを獲得することが出来ない状況に対して、インプラントの先端を上顎洞底の皮質骨に食い込ませバイコルチカルサポートを得るという手法が用いられましたが、この手技を用いても、オッセオインテグレーションを獲得できない場合も珍しくありませんでした。

マクロデザインとミクロデザインの工夫

これらの骨質が悪かったり、骨量が少ないことが原因でオッセオインテグレーションを獲得することが出来ない状況対して、インプラント体の表面性状をチタンの旋盤仕上げから、もっと骨接触面積を大きくするマクロデザインの変更や、骨とインプラントの機械的な嵌合力を高めるようなミクロデザインの工夫がされました。

マクロデザインの工夫としてはインプラントのネジ山の高さを高くしたり、インプラントの太さを太くしたり、ビーズ状のチタンの球体をインプラント体への溶接し骨との嵌合力を高めるなどの工夫が行われました。
ミクロデザインの工夫としてはチタンプラズマスプレーや酸処理、また、骨との化学的な結合や骨の誘導を狙ってインプラント表面にハイドロキシアパタイトをコーティングしたインプラントなども出てきました。

現在では親水性を高めるなどの目的で、ナノレベルでインプラント表面に対する加工が行われています。