治療例から学ぶ

上下顎崩壊症例(10)

上顎は歯牙がほとんど外観に露出しないケース

初診時

患者さんの顔貌だが、唇をわずかに開いた時には下顎前歯と下顎前歯の歯肉が外観に露出するのに上顎は歯牙がほとんど外観に露出しないです。

パノラマレントゲン写真
初診時顔貌

初診時正口元
安静状態にすると下顎は少し前方に位置
初診時正口元拡大
臼歯を咬合させると下顎は後退

オーバージェットもオーバーバイトも大きい

初診時正口元拡大
初診時右側方面観
初診時左側方面観

初診時正口元拡大
初診時右側方面観
初診時左側方面観

初診時上顎咬合面観
初診時下顎咬合面観

手術過程

上顎はAll-on-4(オールオン4)で修復

パノラマレントゲン写真
パノラマレントゲン写真

咬合高径を挙上し、下顎位を前方に誘導する為、上顎はAll-on-4(オールオン4)で修復することにしました。

手術写真
手術写真

手術写真

この症例で印象的だったのはインプラント埋入時に右上犬歯部と右上小臼歯部のドリリング時にパイロットドリルを引き抜いた時、血液では無く、黄色い脂肪の液が形成窩から出てきたことです。

インプラント自体は十分な初期固定を得ることが出来たが、11ヶ月後に、右上犬歯部と右上小臼歯部のインプラントは十分なオッセオインテグレーションが得られておらず、マルチユニットアバットのスクリューを締結する時点でインプラントが回転したので撤去しました。使用したインプラントはZIMMER-BIOMET社製のT3インプラントです。

パノラマレントゲン写真
当医院ではこのような事態に備えて上顎でAll-on-4(オールオン4)を行う場合は4本では無く、最低6本のインプラントを使用するようにしています。そうでないと、患者さんは固定式の仮歯を装着することが出来ないからです。

パノラマレントゲン写真
粘膜と骨の治癒を3ヶ月待ち、コンピューターサージカルガイドステントを用いインプラント埋入を行いました。なお、今回使用したインプラントは三次元的構造が複雑でネジ山が深く、表面積が大きいノーベルアクティブを使用しました。

フラップレス埋入なので、出血はほとんどなし

手術写真
手術写真
手術写真
手術写真
手術写真

手術写真
手術写真
手術写真
手術写真
手術写真

二次手術(9ヶ月後)

パノラマレントゲン写真

9ヶ月待って二次手術を行なったが、全てのインプラントのオッセオインテグレーションを確認しました。

パノラマレントゲン写真

9ヶ月待ってオッセオインテグレーションを獲得したインプラントのアバットメントに印象用コーピングを装着し印象を採得しました。
この印象は最終印象では無く、印象用のコバルトクロムで鋳造した患者さん個人の為の印象用フレームを製作する為の印象です。印象用コーピングを装着した際に、印象用コーピングがアバットメントに完全に装着されていることをパノラマレントゲン写真で確認してから印象採得を行います。

パノラマレントゲン写真

技工所に発注したコバルトクロムで鋳造された印象用のフレームが出来上がってきたので、パノラマレントゲン写真で印象用コーピングが浮いていないことをパノラマレントゲンで確認した後、鋳造印象用フレームと個々の印象用コーピングとをパターンレジンで固定し、上からシリコン印象材でオーバーインプレッションを行います。

最終補綴物装着

パノラマレントゲン写真
レントゲン写真

最終補綴物装着時の顔貌
最終補綴物装着(口元拡大)
最終補綴物装着(前方面観)
最終補綴物装着(前方面観)
最終補綴物装着時のアンテリアガイダンス

最終補綴物装着時の顔貌
最終補綴物装着(口元拡大)
最終補綴物装着(前方面観)
最終補綴物装着(前方面観)
最終補綴物装着時のアンテリアガイダンス

最終補綴物装着時の右側方面観

最終補綴物装着時の右側方面観

最終補綴物装着時の上顎咬合面観

最終補綴物装着時の下顎咬合面観

リスク・副作用、費用について

リスク・副作用

この症例で特徴的だったのは、上顎のAll-on-4において、右上部の2本のインプラントがオッセオインテグレーションを獲得出来なかったことです。原因として考えられることは、やはり骨質が極めて悪かったことです。

骨質は通常はCTから得られるハンスフィールド値で判断しますが、この患者さんにおいてCT値自体は良くは無いものの、通常はオッセオインテグレーションを獲得出来るレベルの悪さでした。では、どのように悪かったかと言うと、インプラントを埋める時に骨で穴を開けた時に、通常は出血が起こるのですが、この患者さんは骨の穴から血液では無く、透明な液、つまり脂肪が出てきたのです。このような骨はハンスフィールド値が良くてもオッセオインテグレーションを獲得することは難しいのです。

ましてや即時負荷には不利なのです。幸い、他のインプラントではオッセオインテグレーションを獲得できましたので、それらのインプラントで固定式のテンポラリーを維持し、インプラントを追加埋入しました。追加埋入したインプラントは最高のオッセオインテグレーションを獲得する為、即時負荷をかけず6ヶ月安静にします。

すると、全てのインプラントでオッセオインテグレーションを獲得することができました。患者さんが困らないようにする為には、上顎には4本では無く、6本のインプラントを使用するということが重要なのです。インプラントの本数が多すぎるデメリットは費用負担が増すことと、インプラント間の距離が近くなることです。インプラント間の距離が近くなり過ぎると清掃も難しくなりますし、骨内の血流も悪くなりますのでインプラント周囲炎になって骨を失いやすいという副作用があります。

費用

上顎420万円